ふたりが重ねたストーリーを写真で届けていきたい 「ふたりのポートレート」リニューアルの舞台裏

ふたりのストーリーを、写真に。

ふたりが出会う前の、それぞれの人生の歩み。

ふたりが出会ってから、一緒に重ねた時間。

どちらのストーリーも大切にしながら、ありのままの魅力を写真で届ける「ふたりのポートレート」

これまでたくさんのお客さまのストーリーを撮影してきましたが、もっと深く私たちの思いを込めて写真を届けていきたいと考え、2024年、撮影プランを一新しました。

リニューアルでは、クッポグラフィーの多種多様なセクションから意見を取り入れ、内容に反映。プロジェクトを率いたのは、3人のスタッフたちでした。

同世代の3人が中心となってつくり上げた、「ふたりのポートレート」

リニューアルの舞台裏をご紹介します。

山崎 里紗(やまざき りさ)

シニア・プロダクトマーケティングマネジャー。専門学校でマーケティングを学び、その面白さを知る。卒業後に勤務した飲食会社で携わった結婚式の仕事に魅了され、その後ウェディングフォトグラファーとして活動。2021年クッポグラフィーに入社し、マーケティングセクションの立ち上げから携わる。現在は、プロダクトマーケティングマネジャーとして、写真業界に新しい風を吹き込めるような企画を生み出している。

小林 俊介(こばやし しゅんすけ)

ウェディングフォトセクション チーフフォトグラファー。日本大学芸術学部写真学科卒業後、ウェディングの前撮り専門スタジオに入社。1000組以上の撮影を経験する中、フォトグラファーとしてのステップアップとお客さまとの再会ができる環境に身を置きたいという思いから、2021年 クッポグラフィーに転職。現在は撮影以外にも、ウェディングフォトの編集チームをまとめる役割や、後輩育成を担っている。

末廣 桃華(すえひろ ももか)

駒沢公園スタジオ ヘアメイクチームリーダー。結婚式場のヘアメイクアーティストとして勤務した後、希望していた撮影スタジオ(ブライダルの前撮り専門会社)に転職。2023年、経験の幅を広げたいと「家族写真」の撮影も行うクッポグラフィーへ入社。七五三や振袖の着付けなども習得し、オールマイティなヘアメイクアーティストを目指す。ヘアメイクチームリーダーとして、後輩育成も行う。

 

「自分たちが届けたい写真」とは何なのか

ーー「ふたりのポートレート」が2021年に始まってから4年が経ち、今回初めてリニューアルをしました。そもそもどうしてリニューアルをすることになったのでしょうか?

山崎:私たちが届けたい写真をちゃんと届けられているのかという疑問からのスタートでした。

ふたりのポートレートは、カップルを写す撮影プランで。ウェディングに特化せずに日常でも利用していただけるように、衣装もお客さま自身でのお持ち込みができて、選択の幅が広い内容でした。結婚のタイミングでなくても、おふたりにとっての記念日であったり、日常の楽しみとして撮影に来てくださる方も増えていく一方で、結婚式の前撮りで利用されるお客さまが圧倒的に多い状況にありました。お客さまのニーズに答えるためには、自由なスタイルもいいけれど、クッポグラフィーが持っているクリエイティブを提供する内容にしたほうが、届けたい写真を届けることができるのかもしれないと考えたのです。

リニューアルプロジェクトを中心となって進めた山崎。責任の大きさを感じながらも、先輩や同世代の仲間に何度も相談をすることで形にできたと話す。

山崎:ウェディングフォトが世の中に数多く存在する中で、クッポグラフィーの写真の価値を明確に伝える必要があると、社長の久保さんやマーケティングセクションのスタッフとも話し合って。内容の見直しというよりも、一から新たなものをつくり上げるプロジェクトでした。

ーー撮影やヘアメイクの現場では、クッポグラフィーの写真の価値がきちんと届けられていないと感じることはありましたか?

小林:時々感じることがありましたね。

末廣:そうですね。

小林:僕たちフォトグラファーは、「すべての人が心の支えになる写真を持っている世の中をつくる」ことを目指して日々撮影をしているため、1枚の写真がその人にとってかけがえのないものになってほしいという思いがあります。

ふたりのポートレートは、僕がクッポグラフィーに入社した頃にできた撮影プランでした。背景やお花などの小物に焦点が置かれるのではなく、その人のありのままの魅力を残すことを一番大切にする。これまでウェディングの前撮りを撮影してきた僕にとって、衝撃的な考え方でした。自分も含めたフォトグラファーの多くが、人以外の背景や場所に重きを置いて撮影をすることがある中で、「そうだ、僕が撮りたいのは人だった」と気づかされて。

結婚前のカップルが撮りにきてくださったり、おふたりが撮りたいと思ったタイミングに来てくださったり。そういった縛られない自由さは、撮っている側も試されているようで楽しかったです。一方で、4年ほど撮り続ける中で、撮影スタイルが自由であるが故に、こちらが届けたいものがぼやけていったことも課題にあったんです。

山崎:そうなんですよね。今回は、「ふたりのストーリーを写真に写す」ということを大きな軸として、そのふたりの魅力を引き立たせる衣装、お花、ヘアメイクまでクッポグラフィーでプロデュースをするという内容に一新しました。

ドレススタイリストやフローリストに相談をしながら、衣装や花束の方向性を決めていった。

末廣:今まではドレスを持ち込まれるお客さまや、ヘアメイクをご自身でされるお客さまもいらしゃったので、ヘアメイクアーティストとしては少し寂しさも感じていました(笑) クッポグラフィーのスタジオは独特の色みや光の加減もあるため、せっかくのメイクも写真に残すと目立たなくなってしまうことも。

小林:自然光を利用することが多いため、時間帯によっても、色味や表情が変わってきます。フォトグラファーが気づかない点も、撮影や編集段階で末廣にアドバイスをもらいました。お客さまのこの部分が魅力的で、メイクによって引き立つようにしているため色味を調整してほしい。ヘアスタイルはこういったテーマでつくり上げたなど、細かい点を教えてもらいながら。

同世代の末廣(写真左)と小林(写真右)。普段から、写真全般に関して相談し合うことが多いという。

ーーヘアメイクアーティストがフォトグラファーに、写真に関する意見を言えることに驚きました。

末廣:良い写真を届けたいという思いは同じですからね。

実際に目にしたヘアメイクと、写真に写ったときのヘアメイクって違うんですよね。私たちは、お客さまが魅力的に写し出されるところまで計算してヘアメイクを施しているので。ヘアメイクの視点からの意見も取り入れてくれて、コバシュンさん(小林)には感謝してます。

“ふたりらしさ”を写真で届けるとは 言語化したことで生まれた共通認識

ーー大きく変わった点はありますか?

小林:「どんな写真を届けていきたいのか」が言語化されて、スタッフみんなで共通認識を持てたことが大きかったです。

山崎:ふたりのポートレートは、社長の久保さんが人物写真の原点に立ち返って、ウェディングフォトを再解釈した撮影プランでした。

「ウェディングフォトというカテゴリーにふたりをはめ込んでいくのではなく、ふたりの写真を結婚の機会に撮ろう」という撮影で。「私たちが一番写したいものはあくまで人なんだ」というメッセージが込められていました。

当時から在籍しているスタッフは、久保さんの思いや考えを咀嚼しながら撮影ができていたと思いますが、その後スタッフが増えていくにつれて、個々の考えに基づいた“ふたりらしさ”を届けていたように思います。

小林:そういうところはありましたね。

山崎:そのため、改めて「ふたりらしさとは何なのか」を考えるところから始めていきました。

ーー考えた末、どのようなことを打ち出したのでしょうか。

山崎:「ふたりのストーリーを 写真に」と、コンセプトをひとつの共通言語にしました。

出会う前のそれぞれの人生の歩みから、ふたりの人生へと変わっていくまで。そして、今一緒に紡いでゆくふたりの時間。そのストーリーを写真に残すという方向性を、みんなで再確認し合いました。

小林:コンセプトを考えるのは大変でしたね。何度もミーティングで話し合いました。一度これで行こう!となったものも、ちょっと違うと白紙にすることも何度かありました。

マーケティングセクションがお客さまのニーズを踏まえて出す案と、クッポグラフィーが届けたい写真の価値を照らし合わせながら、双方が歩み寄る形でプランの内容をつくっていった。

小林:ファミリーフォトでもウェディングフォトでも、クッポグラフィーは、人や感情にフォーカスすることに重きを置いていて。その人の人生のストーリーを写真に写すことを大切にしています。ふたりのポートレートでも同じことを目指せばいいと考えがいきついたときに、コンセプトが固まりました。

今までやってきた撮影と大きく変わったわけではありませんが、みんなで共有できるコンセプト、一本の軸ができたことは、心構えとして大きな変化がありました。スタッフ間で写真について話す上でも、共通認識がある状態で話すとスムーズに理解しあえることも。

僕たちは、ふたりのストーリーを撮るんだと立ち戻れる場所があるような。

山登りが共通の趣味で出会ったふたりのポートレート。おふたりと会話を重ねたことから生まれた1枚。

 

「ふたりのストーリーを 写真に」というコンセプトができてから、フォトグラファーたちが改めて同じ方向性を目指して撮影できるようになったように思うと小林は話す。

ーー 一つ共通認識があるとチーム力も高まりますよね。

山崎:共通認識があることで、写真の一つ一つに意味が生まれて。さらに、お客さまにも写真の意図を伝えることで、おふたりだからこそ生まれたストーリーが今後心の支えになってほしいという思いで考えてきました。何年経っても忘れない、自分たちにとっての大切な写真になってほしいですね。

普段着で撮影ができたり、撮影スタイルが自由だったときの良さもあったので、変化への葛藤もあったよね。

小林:そうだね。自由なスタイルで撮影できることも、フォトグラファーとしてはやりがいと面白さを感じていたので、葛藤はありました。

山崎:一度コンセプトを固めてやってみて、お客さまの反応や声に耳を傾けながら変化をしていこうと進めました。

“ふたりらしさ”を写すために 撮影前に設けたお客さまを知る時間

ーーところで、お客さまおふたりのストーリーを知る機会は、どのタイミングであるのでしょうか。結婚式撮影の場合は、事前に打ち合わせの時間や新郎新婦さまとお話をする機会が設定された撮影もあると伺いましたが、そういった時間はあるのでしょうか?

山崎:はい、今回のリニューアルで事前におふたりのことを知る機会をいくつか設けたことも大きな変更点です。事前のアンケートをおふたりそれぞれに回答していただき、担当スタッフで共有をしています。

末廣:アンケートの内容がとても面白くて。おふたりのことだけではなく、それぞれの好きなものであったり、出会う前のライフストーリーについても、けっこう細かく聞いていますよね。パートナーの回答を見て、初めて知ったと驚く方もいます。

ーーお客さまにとっても相手の回答にワクワクしそうです。

末廣:例えば、人生で熱中したことを聞く質問も。結婚に特化しない質問もあったりして面白いですよね。

山崎:別々に回答をしていても、似たような回答をされているカップルがいらっしゃることも。アンケートからは、おふたりの人柄も感じられます。

小林:そうそう。一見静かで落ち着いている雰囲気の方でも、アンケートには、アグレッシブな内容であったり、スポーツに長年打ち込んできた経験が書かれていたり。リニューアル前は、アンケートにあるような質問を撮影中に聞いていたんですよ。

ーー撮りながら質問するのはなかなか大変そうですね。

小林:時間が限られているという点では大変ですね。今は、事前に知ることができるので、こちらも当日どんな話をしようかと思いを巡らせる時間もできました。当日はもっと踏み込んだ話ができるようになり、お客さまとの距離も縮められて、短い撮影時間がより濃いものとなっていることを実感しています。

撮影前にコミュニケーションを取りに行って、始める頃には和気あいあいとしていることも。お客さまを知った状態で1カット目が撮れるのは、すごくありがたいです。

ウェディングフォトの際には、新郎新婦に「僕を友人の一人だと思ってくれたら嬉しいです」と伝える小林。まるで友人に見せるような自然体の表情こそが良い写真になると考えている。

 

末廣:事前の情報は、フローリストとも共有しているので、お客さまの写真や情報をもとにイメージをしながら花束をつくっています。

以前はお花を取り入れるかどうかはお客さまの判断で進めていましたが、リニューアルを期に必ず花束を入れることになったのは、ヘアメイクアーティストにとっても大きいです。

専属フローリストの前田研史さんは、直接お客さまに会えなくてもイメージにぴったりな花束をつくってくれるので、毎回私も感動していて。花束を初めて見た時のお客さまのリアクションもとても良いですよ。フローリストがおふたりをイメージしてつくっていることをお伝えすると、「私たちってこんな雰囲気なんだ」「え?すごくかわいい」などと喜んでくださることも増えているように感じます。中には、お花を楽しみにして撮影に来てくださるお客さまも。

私も、お花に合わせたヘアメイクを提案できるようになったので、表現の幅が広がりました。

猫好きと話してくれたお客さまの柔らかな雰囲気に合わせたヘアメイクと花束。事前に伺ったエピソードのおかげもあり、おふたりは自然体で撮影時間を楽しむことができたそう。「届けたかったものはこれだった」末廣が確信を持てたリニューアル後初の撮影。

山崎:衣装の試着のため、ヘアメイクアーティストは事前にお客さまに直接会えるようになりましたが、その点はどうかな?

末廣:すごく良いです。おふたりの好みがつかみやすくなりました。試着の日は私服で来てくださるので、普段好きなテイストも見ることができますし。

3着まで試着できるのですが、どのドレスと悩まれたのか、その過程もヘアメイクのヒントになったりするんです。

試着の時間に話すおふたりのエピソードも関係者と共有しています。ちょっとしたお話が撮影のインスピレーションに繋がることもあるので。当日は、おふたりにしか出せない空気感がスタジオ内で生まれているように感じています。

まだ世にない写真を生み出すために 新しいチャレンジを続けていく

ーー同世代・他職種の3人が、遠慮のない関係かつ、お互いをリスペクトしながら意見を出しあう。羨ましい環境ですね。

小林:そうですね。一からつくり上げるような経験は、今までほとんどなかったので新鮮でした。しかも、マーケティングの視点を取り入れながら考えたのは初めて。フォトグラファーだけで話し合っていたらこういう考えは生まれなかっただろうなという瞬間も、何度かありました。

山崎:私は未経験でマーケティングチームに入って4年目になりますが、こんなに大きな仕事を任せてもらったのは初めてで。新しいものが世に出たときの達成感や、みんなで一緒につくり上げていく中での団結力を感じられた機会は貴重です。プレッシャーもありましたが、任せてもらえて感謝の気持ちでいっぱいです。

ーー同世代で進める楽しさなどもありましたか?

末廣:やっぱり思っていることを言いやすいところはありますね(笑)

小林:よくザキちゃん(山崎)からLINEで呼び出されたなぁ。

山崎:相談に乗ってくれてありがとう(笑) 初めてのことが多くて、不安を抱えながらやっていたので。急に、自分の考えをみんなが受け入れてくれるのか、みんなのクリエイティビティを存分に発揮できるようなプランになっているのか、自信がなくなることも多々ありました。その度に、コバシュン(小林)を呼び出して、大丈夫って言ってもらえたおかげで、また前に進めました。

小林:そんな大げさな(笑) でも嬉しいです。

ーーリニューアルをする話ができてから約3か月で世に出たそうですね。

山崎:あり得ないスピード感でした。一般的にサービスをリニューアルする際は、年単位で時間をかけて進めるので。これも、遠慮のない関係性の上でできたからかもしれませんね。

夜のスタジオを利用して撮影する新プラン「ふたりのナイトポートレート」小林の発案から1か月ほどでスタートした。

ーー「ふたりのナイトポートレート」も新しい試みですね。

小林:やってみたら面白いかもと提案してから実現するまでのスピードが速かったです。それいいね、じゃあやろうみたいな。

ーー小林さんが提案したのですか?

小林:そうですね。夜のスタジオにもポテンシャルがあるなと思っていたので。

日中の撮影がほとんどなので、自然光を利用して撮影をしているのですが、スタジオに使われていないライトがあることが気になっていたんですよね。木漏れ日のような暖色の光を照らすことができるライトで。これを活かす手があるかなと。

山崎:こういった感性って、マーケティングにはないんですよね。自分たちだけじゃ思いつかなかった。

私は写真をつくり上げることはできないので。クリエイティブな感性で形にしてくれる現場のスタッフを見ながら、毎回すごいなって。心から尊敬しています。

末廣:マーケティングセクションがどんな思いで企画を考えたのかをそばで聞いていて、そこに自分の思いも寄せながらヘアメイクをしているところもあって。お客さまに発案者の思いをそのまま伝えるときもありますよ。

それぞれの職種のスタッフが近い距離感で働いているので、思い付きのアイディアを各プロフェッショナルに相談できる環境って良いですよね。やってみようって言ってくれる人が周りにたくさんいる。

小林:僕はお客さまも写真をつくる仲間の一人だと思っていて。コンセプトに共感してくださり、自分たちのストーリーはどんな形で写真になるんだろうと、ワクワクしながら撮影に来てくださったら。きっと、その日は心に残る1日になると信じています。

取材・文:石垣藍子

撮影:クッポグラフィー

関連リンク:

ふたりのポートレート プランページ
https://www.kuppography.com/futari-portrait

クッポグラフィー フォトグラファー募集ページ
https://www.kuppography.co.jp/recpg

クッポグラフィー ヘアメイクアーティスト募集ページ
https://www.kuppography.co.jp/recst

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