人生を変える写真を届けたい 旅を続けてたどり着いたウェディングフォトグラファーの道(前編)
ウェディングから七五三などの記念日、そして何気ない日常の写真まで。クッポグラフィーでは、どんな機会でも、その人のありのままを写し出すことを大切にしています。
こうした写真が生まれる背景にある、数々の物語をご紹介する本シリーズ。メンバーのインタビューを通して、仕事やスタジオの空間づくり、お客さまへの思いなどをお届けします。
今回は、ウェディング撮影チームリーダーの大村将也。
小学校の教師だった大村が、世界一周の旅へ出かけて知った写真の面白さ。未経験からスタートしたウェディング撮影では、様々なお客様の人生に触れることができたといいます。旅もクッポグラフィーの撮影にも共通してあったのは「出会いを通した感動」でした。
教育現場で子どもたちに気づかされた“やりたいことに向き合う姿勢”
ーー元小学校の教師という異色の経歴で驚きました。
幼い頃から将来は学校の先生になりたいと思っていました。学校も楽しかったですし、自分の周りの先生たちも楽しそうだったので。晴れて教師になってからも、教育ってすごく大事だと実感したのでやりがいも感じられて、毎日とても楽しく子どもたちと過ごしていました。
ーーそんな中、教師の仕事をお休みして、1年間の世界一周旅行に出かけたんですね。なにかきっかけがあったんですか?
仕事自体は何の不満もなくやっていましたが、ふとしたときに、自分が子どもたちに教えられることはないんじゃないかって思う瞬間があったんです。
子どもたちって、やりたいことが目の前にあって、まっすぐにそれに向き合っているんですよね。でも、大人になっていくと余計なことを考えてしまったりして、やりたいことに対して100%の気持ちで向き合うようなことがなくなっていく。子どもたちには今のまっすぐな気持ちを失ってほしくないって思ったし、自分もそうありたいって思い始めて。
ーーそれで世界一周に。
自分が今一番やりたいことってなんだろうって考えたときに、「旅」が出てきたんですよね。行った結果、自分がどうなるのかも分からないのに何かすごくワクワクして。ずっと教師になることだけを目指してきたので、外の世界を見てこなかった感じもあったので、一度まっさらにして1年間の旅でこれからの自分のことを考えてみようと決断しました。
貧しくても幸せそうだった 価値観が変わった世界一周と写真との出会い
ーー行ってみてどうでした?
シンプルに色んな人がいるなっていうのを肌で感じました。人種だったり文化もそうですが、この世の中には色んな境遇の人がいて、それぞれ自分の世界で生きていて。自分たちよりもはるかに貧しい生活を送っている人もいましたが、なぜか幸せそうに見えたんですよね。その人らしくというか、その環境で生き生きしている感じがすごくありました。旅で出会った人のようでありたいっていうのは、今でもずっと心にあります。
ーーその旅では写真は撮りましたか?
カメラは持っていきましたが、完全に素人だったので自己満足で撮っていました(笑)旅をしていると写真が上手な人にけっこう出会うので、その人たちに教えてもらったり。ISO感度ってそういうことなんだって初めて知るようなレベルでした(笑)
もちろん景色は撮りましたし、仲良くなった人を撮ったり、現地の子どもたちを撮ったり。特に誰かのために撮るとかではなく、僕の旅行の記録として撮っていました。でも何だかすごく撮るのが楽しくて。
その写真をブログに載せていたら、高齢の方や妊娠中の方など、なかなか自由に旅行へ行けない方たちから「まるで自分が旅をしているように感じられて、すごく心が救われました」とコメントをもらったんですよね。ただ自分のために撮っていた写真でしたが、少しでも誰かの力になれるんだと感じることができて、写真ってすごいなと。旅がきっかけで、写真の力と撮ることの楽しさを知って、夢中になっていきました。
ーー帰国してからすぐにフォトグラファーの仕事についたんですか?
いえ、迷わず教師に戻りました。色んな国を回ってみて、改めて教育ってすごく大事だなって思ったんですよね。でも旅中に写真に夢中になっていたので、もっとうまくなりたいなっていうのがずっと心にありましたね。休日に自己流で撮っていても趣味の域を超えなくて、うまくなるには限界があるなってモヤモヤしていて。
ーーそこからフォトグラファーへの転身は、何かきっかけがあったのですか?
大村:世界一周を一緒にしていた妻と、また長期で旅をしたいねと話していたときでした。次の旅では、前回よりももっと楽しくもっとうまく撮りたいなって思って。でも自己流でうまくなるには限界がありますし、既に30歳になっていたので、未経験のものに挑戦するのは今を逃したら遅いかもと。その思いがどんどん膨らんでいったんです。
教師の仕事に何も不満もなかったのですが、写真の仕事に挑戦したいっていう気持ちが前に出てきてしまって。妻に相談もせず面接に応募してしまいました(笑)
人生は一度きり 家族と離れて挑戦したクッポグラフィーのフォトグラファー
ーー最初は、名古屋にある前撮り専門のフォトスタジオで働いていたんですね。
Macの電源の位置すら知らないオジサンに、若いスタッフの子が優しく教えてくれました(笑)本当に何もかも一から学ばせていただきますっていう状態で。お客さまへのプランの説明や和装の形を整えたり、まずは撮影の前段階の仕事から覚えていきました。
ーー 未経験の職種を一から始めるのは大変そう…。
全然!もう全てが楽しくて刺激的でした。ストロボをあてるとこんな風に写るんだとか、撮影はお客さまとコミュニケーションをとりながらするものなんだとか、毎日が学びばかりで面白かったです。
ーー名古屋にいながら、東京のクッポグラフィーを知る機会があったんですね。
ちょうど一番最初にコロナの緊急事態宣言が出たときでした。クッポグラフィーがオンラインで写真教室を開いていたのをインスタグラムで知ったんですよね。それに参加してみたら、皆さん本当に楽しそうにやっていて。世の中が大変なときに自分たちにできることをやろうっていう姿勢もすごいなって感動したんです。
それとほぼ同時期に、久保さんのこともインスタで知りました。なんか、写真や写真業界のことをズバズバ言ってる人がいるぞと(笑)
ーーズバズバ。怖いですね(笑)
怖くもあり、でも自分のことを言われてる感じもあって、すごく共感する部分も多くて。久保さんの投稿をスクショして前撮りの撮影前に見返したりしていました。
ーーそうなんですね!ちなみにどんなことに共感したんですか?
10年後に写真を見返したときに、いいスタジオだなとか、おしゃれな空間だなという人はゼロ。それよりも人を写すことが大事といったような内容でした。その投稿を見てから、当時勤めていたスタジオでも、空間ではなくてその人を撮ることをちゃんと頭の中に置いて撮影するようになりました。自分を勇気づけるような言葉がたくさんありましたね。
久保さんってすごい人だなと思って見ていたら、あのクッポグラフィーをやっている人なんだって繋がったんです。
当時、クッポグラフィーのフォトグラファーチームはウェディング撮影を少数精鋭でやっていて、こんな人たちが日本にいるんだって、僕にとって雲の上の存在というか憧れの人たちでした。妻にもすごい人たちが東京にいるんだよって話していたら、突然久保さんから僕の写真にコメントをもらって。
ーーえ?いきなりですか?
もうほんとびっくりしました。仕事中でしたが心臓バクバクで。インスタをやっていてよかったって思いました。そのコメントがきっかけで、インスタを通して写真について話をするようになって。
ーーそれが入社のきっかけになったんですね。
そうですね。久保さんが仕事で名古屋に来た時には一緒に食事をしたりしながら交流を深めていって、最終的にはクッポグラフィーに入ることになりました。東京の会社ということもあって、妻が何て言うかが一番の気がかりでしたが、クッポグラフィーでやってみたいって伝えたら、行かない理由はないじゃんって言ってくれて。今、僕は単身赴任でこっちに来ているのですが、妻の両親が妻と1歳の息子を支えてくれる環境にも恵まれて挑戦することができました。
ある夫婦の撮影で感じた 自分を支えてくれる妻の存在
ーー入社していかがでしたか?
もう毎日が刺激的で。僕は、結婚式の撮影とスタジオでの撮影、両方を担当していますが、特に「ふたりのポートレート」というスタジオ撮影がすごく好きで。
ーーどんな話をするんですか?
何気ない会話なんですが、おふたりの日常のことだったり、相手の方のどんなところが好きなのかとかも聞いたりしています。僕の知らなかった話をしてくれたり、そんなことがあるんですかっていう驚きがあったり。何だか世界を旅していたときに感じた、人との出会いや感動に似ているんですよね。
ーー旅での出会いと似ているなんて、すごく素敵な時間ですね。印象に残っているお客様はいますか?
今年2月に結婚9周年の記念で来てくださったご夫婦のことがすごく心に残っていて。毎年結婚記念日の度に写真を撮られているご夫婦で、クッポグラフィーでは初めてでした。男性が、恥ずかしがられているのか撮影に対して控えめで。そんな中でも女性は明るく撮影や僕との会話を楽しんでいました。
ーー撮影はどんな感じで進めたのですか?
それはそれで割り切って、じゃあこの二人はどんな写真があったら喜んでくれるのかな、どんな時間にしようかなって思いながら撮り始めたんですね。撮影の最後、ふとした会話の中で「私、来世もこの人と結婚しようと決めているんです」って女性が言ったんですよね。
ーーそんな言葉が…。
相手の魅力的だと思うところを聞いていたときだったと思います。もうぐっときてしまって。ちょっと自分の妻とも重なってしまったのかもしれないですね。僕が勝手に決めた世界一周にもついてきてくれて、勝手にフォトグラファーになって、子どもが生まれたばかりなのに東京に行ってしまったり。そんな中でも僕がやりたいことに挑戦できていることを心から喜んでくれている妻だったので。僕が自分の人生を楽しめているのは、紛れもなく妻の存在があってこそだし、応援してくれているからこそ中途半端なことはできないなと改めて感じましたね。
ーーとてもいい時間ですね。
本当に。後日、「夫にも私にも撮影中変わらず声をかけてくださって、あんなにお話しながら撮っていただいたのは初めてです。大村さんのレンズを通して1枚1枚が宝物になりました。」とメッセージをいただいて。フォトグラファーをやっててよかったなぁって思いましたし、10年目の結婚記念日にまた来ますと言ってくれたことがすごく嬉しくて。
以前の職場は前撮り専門でお客さまと再会することはなかったので、また来てくださいねって言える環境にいること自体もほんと幸せだなって。
あと、スタジオは基本的には指名制ではないのですが、他のフォトグラファーが撮ってもきっと素敵な写真になりますよって自信をもって思えたのも、何だかすごくすがすがしいというか、嬉しかったんですよね。
ーーチームを信頼している。
そうですね。技術もそうですけど、その人らしさであったり、ありのままの魅力を撮るというみんなが共通で目指しているものがあるので。誰が撮ってもこのお客さまに満足していただけるって自信を持って思えたことが嬉しかったです。
後編では、結婚式撮影が未経験だった大村の撮影デビューまでの道のりと、ある結婚式での忘れられないエピソードをご紹介します。
(後編につづく)
後編はこちら↓
取材・文:石垣藍子
撮影:クッポグラフィー
関連リンク:
ふたりのポートレート(ウェディングの前撮り)
https://www.kuppography.com/futari
クッポグラフィー フォトグラファー募集ページ
https://www.kuppography.co.jp/recpg
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